渋谷8

●ハチ公前広場

派出所から出てきた宏が、ドアの前に立った。空を見上げた。
白く光り輝く彗星が、見える。次第に大きくなり、降下してくる。
彗星を眺めながら、宏は交差点の手前まで進んで停まった。

人型信号機が赤に変わり、通行人は足を止めた。平穏に、信号待ちをしている。

宏の隣にいるOLが、空を眺めてはいるが、特に気にもとめていない。見えていないようだ。

宏「君、あれ…」
宏は、上空に人差し指を向けた。

OL「ハッ?」
気持ち悪そうに、OLは宏の側から離れた。

日本中で、宏だけがこの彗星を目撃しているのだ。ありえない。
彗星が、交差点にドンドン向かってきている。飛来してくる。

宏だけが、上空を眺めている。彗星の魔力にとりつかれたかのように、じっと立ち止まって見ている。
宏は、大声を上げたり、逃げようとはしない。

のん気に信号待ちをしている、人々がいる。
人型信号機が、赤から青に変わった。

ハチ公前広場から、大勢の老若男女が渡り歩く。宏も歩き出した。
各通りからも通行人が、交差点内を行きかっている。

宏は、交差点の中央に立ち止まった。人の波にもまれながら、上空を見上げた。

直径50メートルの白く光り輝く彗星が、猛スピードを上げて降下してくる。交差点に向かって、落下してくる。

上空を見上げている、宏。大きな口と、目を開けて見る。

彗星が、ドーンと鈍い音を立てて、直立不動の宏を直撃した。宏の身体が、白い光りに包まれた。

閃光が、宏の全身を消してしまった。

周囲の通行人も、光りに包まれた。まばゆいばかりの閃光は、交差点全体を包み込んだ。

ハチ公が光りに包まれた。人型信号機も包まれた。
9台の公衆電話、露天の本屋も包まれた。
駅前ビルのマネキン4体が、光りに包まれた。

「ふれあいマップ」の看板下で、飲んだ暮れる6人のホームレスも包まれた。
渋谷駅、隣接するスーパー渋谷が包まれた。

光りに包まれる、2基のモニターAとB。
通りのビル全体をも、包み込んだ。

交差点を中心に、半径約200メートル付近が、白い光りによって、街が飲み込まれてしまうのであった。

彗星は、交差点に衝突したもの、何もなかったかのように、そのまま消え去ってしまった。

爆発することもない、クレーターが発生することもない。粉塵を上空に上げることもない。

彗星は、跡形もなく消えたようだ。








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