超短編小説あの先生はいずこへ(W・A2)


ショートストーリーです。

とある総合病院。腰痛の老婆が、整形外科へ診察しに来た。
医師A「痛み止めとシップ薬を、処方しときまね」

老婆「シップ薬は、全然効果がないです。先生、誰か整体師を知りませんか? 知り合いの整体師が、突然閉店して困っているんです。あの先生、腕がいいんですよー」

医師A「さー、民間資格の整体は、関心ないですね。保険がきかないでしょう」
○ ○

実年男性が、眼科に来院した。
医師B「では、目薬を処方しときまね」

男性「目薬ですかー? あの先生に足裏をマッサージしてもらうと、目がスッキリしちゃうんですよ。どこに、行ったのかなー」
医師B「足裏をもんだだけで、視力が回復するわけがないじゃないですかー」
 ○    ○

糖尿病の男性が、内科に来た。背中全体が硬い。

男性「将来、足を切断しないといけないのでしょうか。あの先生、背中のツボを押しただけで、糖尿病だと指摘してくれましたよ。あの先生なら、病気を治療してくれそうなんだけどなー」

医師C「そんな人がいたら、医者は失業しますよ。その人は、ウソをついているんですよ」
○    ○

病院内の一室。医師A・B・C、事務局長、師長が廊下で並んでいる。

医師Aは、椎間板ヘルニアで苦しんでいる。医師Bは、眼精疲労だ。医師Cは糖尿病、事務局長は腎臓病、師長Dはひざの関節が痛いようだ。

一室には、白のジャージを着た男性がいる。背中には、白い形のスペードのエースが描かれている。ベッドの上で、院長が起き上がった。坐骨神経痛だ。

院長「いやー、すっきりしたー。これで、治療に専念できますよ。先生を雇ったのは、正解でしたよ。一般患者を相手に、施術しなくていいですからね。

医者と看護師だけを、治療して下さい。患者を相手にすると、法的に問題がありますから。くれぐれも、患者たちには見られないように…。末永く、影で私たちのために働いて下さいね」

そういい残して、院長は立ち去った。この男性は、通称ホワイト・エース(W・A)と呼ばれる整体師だ。病院内で、医師や看護師たちを相手に、ボディケア(整体)業務を開業したようだ。

医師でも治療できない、見放された病気を、W・Aが施術している。W・Aに、患者が流れては困る。危機感を悟った院長が、彼をヘッドハンティングしたのであった。

WA「俺、仕事って嫌いなんだよなー。くそ、まだ10人以上も並んでいる。1日、60分施術したとしても、4人が限界だよ。指がイテ―ヨー」

電話が鳴った。WAが、受話器を手にした。救急課の医師Eだ。

医師E「先生、俺、52時間も働いているよー。まだ、10時間以上は働きそうだよー。くたばりそー。お願い、救急課に来て施術してくれよー」

WA「しょうがないなー。待っている顧客は、後にするか」

医者は患者を救えるが、医者を救える職業の人は、どこにもいない。
○ ○

精神科医「先生―。眠れないよー。施術してくれー」







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